CDNの料金


CDNの料金については、非公開にしている事業者(多くは古くからサービスを行っている会社)が多く、一概に比較することはできません。料金比較に必要となる情報を解説します。

料金のトレンド

Internetの配信コストは、過去10年というスパンで見ると、1/10ぐらいになっています:

  • 回線費用:10年前の1G回線の料金≒現在の10G回線の料金
  • サーバ費用:同程度のサーバで10倍の配信能力
    • 補足:データセンタ費用(床代)は上がっているが、それ以上にサーバ能力が上がっている

それに合わせ、CDNの単価も年率10%程度下がり続けています。ただし、配信量によりディスカウント率は異なります。低ボリュームの例としてAmazon Cloudfrontの料金(日本、10TB以下、流量課金部分)をプロットすると、以下のように、6年間で0.081ドル(36%)、年率5%程度の値下げです:

cloudfront-price

  • 2008年:$0.221
  • 2010年6月:$0.201
  • 2014年4月:$0.190
  • 2014年12月:$0.140

一方、高ボリュームについは、Dan Rayburnがサーベイを行っており、値下げ率は以下のようになっています:

年間契約額 2014 2015
1億円以上 26% 31%
5,000万~1億円 20% 22%
2,500万~5,000万円 14% 12%

非公開のCDN料金について

古くからの大手事業者(Akamai、Limelight等)は、非公開の料金を続けています。このひとつの理由は、技術系設備サービスにありがちな以下の構造にあります:

  • 既存顧客:高い単価で契約している
  • 新規顧客:CDNの配信原価は毎年下がり続けており、新規顧客の獲得にはそれなりの単価提示が必要である

この結果、同程度の配信量でありながら、ユーザにより契約単価が10倍違うということも珍しくありません。

契約更新

契約更新における単価の見直し(他社への見積もり依頼)は必須であると言えます。交渉の目安としては1年あたり10%程度です。そして、いままで単価交渉を行っておらず5年ぐらい単価が変わっていない場合であれば、半額程度のディスカウント交渉を行うことも無理ではありません。また、米国における調査では、PB以上の大口契約かつ契約配信量が増えるという前提で、数十%の単価値下げが行われています(「同じ契約金額で配信契約量を数割増やす」というのが本当のところです)。

契約更新においては以下のような点に注意するひつようがあります:

  • 毎年10%程度のディスカウントを要求する
  • 原則、複数年度契約(2年、3年)は行わない、行う場合は大幅なディスカウントを要求する
  • Cloudfrontの価格設定を参考にする(一般的なCDN契約であれば、完全従量のCloudfrontより安くなる)

サポート費用

CDNの設定にはWebとNetworkに対する深い知識が要求されます。特にWordpressのようなCMSを使用したサイトやPHPにより動的にページを生成しているサイトのCDN化は困難です。自社にCDNのエキスパートを抱えている場合、単価だけの選定でも問題ありません。しかし、CDNの知識が乏しい場合、サポートに手厚いCDN事業者を選ぶ必要があります。

各種課金方法

無料CDN

無料CDN

固定料金

定額料金CDN

帯域課金

配信したピーク帯域に対して課金する方法です。昔は、CDN事業者の設備も潤沢ではなく、ピークのある配信は、CDN事業者にとってもコストのかかる配信でした。そのため、コストに見合った請求として帯域課金が存在していました。また、ピーク性の無い配信では、CDN事業者の配信コストも安くなるため、顧客への請求額を下げたい場合も、帯域課金が使用されていました。しかし、CDN事業者の回線設備が潤沢になってきており、一般的なWeb用CDNとしては、ほとんど使用されなくなっています。

一方、最近登場したDDoS対策付きCDNにおいては、帯域課金が復活しています。これは、DDoS対策を行うコストがピークトラフィックに依存するためです。また、Dan Rayburnによる2015年の調査では、大口ユーザ(月間配信量がPBクラス)では帯域課金が復活しています。

流量課金

配信した流量に対して課金する方法です。

流量課金において注意する点として、事業者により課金単位が1024単位と1000単位に分かれていることがあります。つまり、同じ1TBの流量契約だとしても、両者において約10%の差がでます。そのため、1TBに対し同じ見積もり(10万円)が出てきたとしても、1,024を採用している事業者の方が、約1割割安であると言えます。

1024 1000
1KB 1,024 1,000 2.40%
1MB 1,048,576 1,000,000 4.86%
1GB 1,073,741,824 1,000,000,000 7.37%
1TB 1,099,511,627,776 1,000,000,000,000 9.95%
1PB 1,125,899,906,842,620 1,000,000,000,000,000 12.59%

リクエスト課金

流量以外にリクエスト数に対して課金している場合、料金の見積もりが難しくなってきます。例えば、以下のような前提で1TB配信すると

  • 流量課金:14円/GB
  • リクエスト課金:0.9円/10,000リクエスト

実際の料金は、配信するオブジェクトの平均サイズによって以下のように変化します:

1KB 10KB 100KB 1,000KB
流量課金 14,000円 14,000円 14,000円 14,000円
リクエスト課金 94,000円 9,400円 940円 94円
合計 108,000円 23,400円 14,940円 14,094円

平均オブジェクトサイズは、サイトにより大きく変化しますが、WebSiteOptimization.comの調査(世界トップ1000サイトに対する調査)によると、平均13.6KBです。そのため、前記前提で計算すると1TBの配信に対して約21,000円が費用となります。

従量課金

今までのCDNは主に大口ユーザの大量配信をターゲットとしていたため、コミット契約(毎月決まった額の料金を支払い、ある流量までの配信が可能:携帯電話における1GB、7GB契約のようなもの)が主流でした。一方、CDNユーザの裾野も広がり、小規模な配信についてもCDNが使用されるようになりました。これに合わせて登場したのが、従量課金(使用した分だけ支払う)です。ただし、その単価については、携帯電話のプリペイドと同じく割高に設定されています。

また、CDNにおけるコミット契約についても、月間配信量ではなく、年間配信量での契約が可能になっており、毎月契約配信量が余るということは無くなってきています。また、機能性の低いCDNを提供している事業者(価格優位性のみが存在意義)では、従量課金においても安価な単価を提示している場合がありますが、これは機能性と価格とのトレードオフになります。

米国CDN価格調査

CDNの業界アナリストであるDan RayburnがCDNの価格についてアンケート調査を実施しています。

2014年の結果

以下の表が2014年のサマリーです(US$1を100円と換算、月額費用は鍋島追記)

年間契約額(万円) 月額(万円) 回答数 配信量(PB/月) 単価(GB)
10,000~ 833~ 32 7 0.7~2
5,000~10,000 416~833 39 2~4 1~3
2,500~5,000 208~416 67 2 2~5
~2,500 ~208 460 ~7

2015年の調査結果

CDNトレンド2015(料金調査)