パケット着信課金(ゼロレーティング)


パケット着信課金とは、パケット料金をユーザに代わりサイト側が負担するサービスです。フリーダイアル(トールフリー)のパケット版的な位置づけとなり、英語ではZero Rating, Sponsored Data (AT&Tサービス名)と呼ばれています。

モバイルオペレータの視点としては、頭打ちが見えてきたモバイルトラフィック(MNOのパケット収入)に対し、一般ユーザからではなく、企業サイドから新規収益を上げる施策になります。

ビジネスモデル

ビジネスモデルを、ユーザの通信料を肩代わりする原資の視点で、分類すると以下になります:

  • キャリア:販売促進費用
    • 特定のサービスを無料にすることにより、加入者の増加を狙う
  • 企業:マーケティング・広告費用
    • ユーザに対し広告やマーケティングリサーチを行うときに、その通信費用を企業が負担する
  • 企業:サービス原価
    • 有料サービスなどにおいて通信費を企業側が支払う(キャリアからの大口ディスカウントを生かし、割安に通信を提供する)
  • 企業:販売管理費(顧客対応費用)
    • 従来のフリーダイアルと同様に問い合わせ等の通信料金を企業が負担する
    • 顧客への情報提供による各種コストの抑制。たとえば、健康保険企業の場合、適正な医療情報を提供することにより、健康促進や医療費の抑制ができる
  • 企業:一般管理費
    • BYOD(私物端末の業務利用)において、業務通信の料金を企業が負担する(公私分計)

企業およびサービス

まず、世界初の着信課金は、2004年に開始された「FOMAパケット・フリーサービス(tm)」です。ただし、パケット定額サービス(パケホーダイ)も同時に始まり、パケット・フリーサービスには、ほとんど需要がなかったと思われます。

その後、2010年ごろから開発途上国において、SNSを中心としたトライアルが行われました。ただし、多くのものは定常的な無料化ではなく、キャンペーンとしての実施です。つまり、CPおよびキャリア両者が、新規加入の促進として「通信無料を一時的に提供した」というものです。そして、実際に効果があったという報告もあげられています(要出典確認)

  • Facebook
    • Facebook Zero
      • Facebookへの通信を無料化
      • 2010年、約50キャリアで実施された
  • Google
    • Google Free Zone
      • Googleへの通信を無料化
      • 2012年から5キャリア程度で実施された
  • Twitter
    • Twiiter Zero
      • Twitterへの通信を無料化
      • 2012年からいくつかのキャリアで実施された

また、2012年から、やはり開発途上国においてWikipediaの定常的な無料化が行われています:

  • Wikipedia
    • Mobile partnership
      • wikipediaへの通信を無料化
      • 2012年からはじまり、恒常的な通信無料化を実施
      • 対応キャリアは増加中(次のInternet.orgと関連)

そして、2012年、Facebookは、Facebook Zeroを一歩すすめたinternet.orgを発表しました。ただし、提供される無料帯域は限られているようで、有料の高速モバイル環境への販促キャンペーンとしての意味合いも持っています:

  • Facebook
    • internet.org
      • 残りの50万人(発展途上国)をInternetに繋げることを目標
      • 無料通信の対象
        • Wikipeida
        • Facebook Messanger
        • UNICEF Facts for Life (医療情報サイト)
        • その他、地域情報等
      • 参加キャリア
        • 2014年にザンビアで実サービスを開始
        • その後、16キャリアが参加

一方、Deutsche Telekom (T-mobile Deutsche)は、2012年、Spotify(音楽サブスクリプションサービス)のトラフィック無料化をアナウンスしました。背景としてDeutche TelekomはSpotifyサブスクリプションを販売しており、この無料化は、「Spotifyの販促」および「音楽トラフィック無料という差別化によるDeutche Telekom自体の販促」になっています:

汎用的な着信課金サービスは、2014年、AT&TがSponcred Dataとしてアナウンスしました。その初期パートナー企業と狙うビジネスは以下になります:

その後、Un-Carrier(脱キャリア、キャリアらしくない)戦略を進める米国T-Mobileは、主にキャリアの差別化として以下のトラフィック無料化を行っています:

  • Music Freedam
    • 2014年
    • 音楽サービスを無料化
  • Binge On
    • 2015年
    • 動画サービスを無料化
      • 対象動画のビットレートは制限される

もっとも最近のサービスとしては、米国最大手であるVerizionのパケット無料化があります:

  • Verizion
    • FreeBee Data 
      • Webサイト全体もしくはアプリ通信を無料
      • 無料通信の対象
        • go90 (自社の動画配信サービス)
        • Hearst Magazine、AOL等

一方、日本では以下のようなサービスがあります:

  • プラスワン・マーケティング
    • FREETEL SIM
      • 無料通信の対象
        • LINE、WhatsApp、WeChat
  • J:COM
    • J:COM MOBILE
      • 無料通信の対象
        • J:COMオンデマンド
  •  LINE
    • LINEモバイルを発表
      • 無料通信の対象
        • LINE、Facebook、Twitter

サービス変遷

2004年

2010年

2012年

2013年

  • Facebook: Inernet.orgをザンビア共和国で開始

2014年

2015年

2016年

データ単価とアプリケーション

まず、パケット単価については、500円/GBがパケットの原価と仮定します。以下背景となる情報です:

この単価で「パケット料金の肩代わり」が可能なビジネスを、「通信量1GBあたり幾らのお金が動くか?」という視点で考察したいと思います:

  • オンライントレーディング
    • 取引高:1千億円/GB
      • 前提:取引通信1KB、平均取引10万円
    • 売買手数料:1億円/GB
      • 前提:料率0.1%
    • 補足
      • 実際は、株価チャートの視聴等で取引あたりの必要流量は大幅に増加します。ただし、取引トラフィック自体は、最も高額な情報が流れている通信であると言え、着信課金の一歩先にある「通信の優先処理」においても有望なアプリケーションだと言えます。
  • EC
    • 売買高:10万円/GB
      • 各種資料から作成
    • 補足
      • 500円/GBは、売買高の0.5%に相当します。一方、ECサイトのアフィリエイト料率は1%程度であり、特定ECサイトを無料化するための原資になりえる水準です。
  • 有料動画
    • 売上げ:600円/GB
      • 前提:動画1時間500MB、1本あたり300円
    • 補足
      • 売上げ600円に対しパケット費用500円となり成立しません。
      • ただし、大手キャリアの割高なパケットプラン(数千円/GB)を利用してるユーザに対しては、安価な通信料(CP側が大口契約しディスカウントを受ける)を作品価格に上乗せするというビジネスモデルが成り立ちます。
  • 広告
    • 売上げ:500円/GB
      • 前提:動画1分10MB、1視聴あたり5円
    • 補足
      • 売上げ500円に対しパケット費用500円となり成立しません。