国内モバイルトラフィック2014


総務省が2015年4月に発表した、「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計・試算 2014年11月集計結果」をベースに、国内モバイルトラフィックの増加率を考察します。[English Version]

増加率の変化

モバイルトラヒックは四半期単位に集計されているのに対し、固定トラヒックは半期単位の集計であるため、固定トラヒックについては、四半期単位に平均値を追加し、増加率の変化をプロットしたものは以下となります(スマートフォンのオフロード分は固定にカウントされています)。

jp-traffic2014-rev1

このグラフからは、「2014年後半にトラヒック増加率がモバイルと固定で逆転」していることが読み取れます。

原因の考察

米国の状況

CTIAが行った調査によると、米国におけるトラフィック増加率(対昨年非)は以下のようになり、2014年は急激に落ち込んでいます:

  • 2014年:26%
  • 2013年:120%
  • 2012年:69%
  • 2011年:123%

補足:CTIAの調査結果については、米国モバイル状況2014に記載しました。

4G一般の傾向

世界的に見ても、4Gが普及している地域におけるモバイルトラフィックの伸びは大きなものではありません(出典:77% Mobile Data Traffic Growth in Q1 as Emerging Market Momentum Builds、前年同期比)

  • シンガポール:25%
  • 香港:34%
  • 米国:26%

また、このレポートでは、「全世界の全(2G, 3G, 4G)モバイルトラフィックの伸びは前年比77%増、増加ペースは鈍化」と報告しています。

スマートフォン普及速度が減速

各種調査によれば、2014年はスマートフォンの普及率が50%を超えた(成熟期に突入した)年になります。そして、スマートフォンは、成熟期の一般的な特徴である「普及速度の減速」に陥っていると言えます。また、ガラケーの出荷台数が増加するなどそれを裏付ける各種調査結果が発表されています。

トラフィックオフロードが増加

モバイルトラフィックのWifiオフロードも、徐々に進みつつあります。KDDIの資料によると、KDDIのオフロード率は以下のようです:

  • 2012年3月:20%
  • 2013年3月:52%
  • 2014年3月:57%

また、総務省による調査では、「スマートフォン利用者かつ自宅に固定インターネット接続回線がある者のうち、69.7%が自宅にてスマートフォンから無線LANを経由しインターネットに接続」しているようです。

スマートフォンによる動画視聴の伸び

一方、コンシューマ向け動画配信サービスでは、モバイルへの移行が圧倒的となっています(情報ソース確認中)。しかし、その利用実態としては家庭内におけるWifiオフロードを前提とした視聴であると思われます。

スマートフォン接触時間の伸び

ニールセンによる調査では、「マートフォンからのインターネット利用者、2015年冬にはPCを超える可能性」と、着実に媒体としてのシェアを広げています。

まとめ(鍋島意見)

様々な要因が絡み合っており、結論付けることは難しいですが(モバイルキャリアもしくは端末メーカが、端末あたりのWifiを含む消費トラフィックを公開してくれればクリアになりますが)、2014年までのモバイルトラフィックの伸びは、「リッチメディアの消費増加」によるものではなく、「スマホユーザの増加」に支えられていたと推測します。

また、モバイルキャリアおよび関連メーカが示していた「毎年トラフィックが2倍」等の予測ついては、モバイルキャリアが十分なパケット単価の値下げを行った場合にのみ成立するモデルと言えます。つまり、ユーザが許容するパケット料金支払い額は、ある一定額で抑えられます(現在でも高すぎるというのが一般的な意見です)。そのため、パケット単価の値下げを行わない限り、急激なトラフィックの増加は今後発生しないと思われます。

モバイル・リッチメディア普及に向けての課題

スマートフォンへの移行をためらう理由としては幾つかありますが、パケット料金の高さが最も大きな阻害要因だと思われます。一方、MNOの設備コストは下のグラフ(ドコモ社のL2回線卸価格)のように毎年下がっています:

docomo-holesale

しかし、MNOのパケット料金ついては、3社横並びとなっており(ナッシュ均衡に陥っている)、2014年に若干の値下げがあったものの、1,000円/GB程度の高止まりが続いています。一方、この卸料金の値下げを受け、MVNOは安いパケットプランを出してきています。しかし、MVNOのシェアは、MNOがパケット料金値下げを行うほど大きくありません。

そのため、当面はMNOのパケット単価は高止まりしそうであり、MNOを使うような一般的なユーザがモバイル・リッチメディアを積極的に使うようになるのは、もう少し先になりそうです。