動画の視聴解析
このシリーズでは動画の視聴解析を解説していく予定です。今回は、まず、この市場の全体像について概説します。
CDNと動画解析の関連性
動画の視聴解析は、以下の理由でCDN関連市場として大きく注目されています。
- ビッグデータ解析の普及
- 消費者の詳細な行動解析により様々な知見を得ることが可能となっており、この解析を簡便かつ詳細に行えるシステムへの要求が高まっています
- CDNとの親和性の高さ
- 動画の視聴解析では、ビーコン形が主流となっている。しかし、細かな配信統計を取得しようとすると配信サーバのログ取得が必須であり、CDNと一体化した視聴解析プラットフォームが必要になります
- CDN設備においては、アウトバウンドトラフィックがほとんどであり、インバウンドトラフィックは空いています
- CDNは多数の強力な配信サーバ群の管理を得意としています。そして、このフレームワークで、多数の強力な受信サーバ群を管理することができます
- DIY CDNの普及
- 従来のCDNサービスは、配信のみを行い、ユーザ情報は持っていませんでした。一方、DIY CDN (OTTが自社のためにCDNを自社運用する)においては、ユーザ詳細情報の取得が可能となり、詳細な行動分析も容易になります。これらの情報を利用した高度なCDN運用(キャッシュ制御、ルーティング制御) が行われようとしています
- CDN市場の成熟
- 単純なCDN配信については、差別化要素が少なくなり、単価勝負となっています
- このような成熟したマーケットおいて、配信の延長上にある付加価値として、配信対象(コンテンツ、ユーザ)のインサイト分析としての視聴解析が注目されています
CDN・OVP事業者の動向
各CDN、OVP事業者ともに何らかの視聴解析サービスを行っています。その中で最近のトピックとしては、以下のようなものがあります:
- Akamai
- SOASTA(デジタルパフォーマンス管理の専業会社)を買収。
- ただし、現状ではWebサイトのリアルタイムのパフォーマンス管理が主軸
- SOASTA(デジタルパフォーマンス管理の専業会社)を買収。
- Conviva
- 動画用マルチCDNを提供しているが、動画解析サービスに軸足を移した(ように見える)
- スタートアップ
- いくつかの動画視聴解析専業のスタートアップが登場
- バックエンドはAWSベースが多い
- いくつかの動画視聴解析専業のスタートアップが登場
視聴解析の実例
VoD系と広告系に分けることができ、分析手法としては以下のようなものがあります:
- VoD系(動画系会員サービス)
- 解析対象が明確(会員、コンテンツ)かつ手元にある(解析可能)ため、研究が進んでいます(方法論として成立している)。また、会員サービスに対する既存マーケティング手法の適用が可能です
- クラスタ分析/RFM分析
- チャーン分析
- ABC分析
- アソシエーション分析
- 解析対象が明確(会員、コンテンツ)かつ手元にある(解析可能)ため、研究が進んでいます(方法論として成立している)。また、会員サービスに対する既存マーケティング手法の適用が可能です
- 広告・販促系
- 消費行動(AIDMA等)に対する動画の効果測定を行う
- KPI(動画視聴の一般的な指標)分析
- 認知貢献:視聴回数、インプレッション、ユニーク視聴者数
- 検討貢献:視聴完了率(エンゲージメント)、再生時間
- 行動貢献:クリック数
- ユーザ属性を加味した分析
- 属性分析
- DMP連携分析
- 再生順序、カスタマージャーニー分析
- パス解析
- アトリビューション分析
- KPI(動画視聴の一般的な指標)分析
- 補足:具体的な貢献(効果)は、他の分析との連携が必要
- 例
- ブランドリフト→アンケート
- サーチリフト→Google検索の傾向
- TV視聴率→視聴者パネル
- 間接CV→第3者配信
- 例
- 消費行動(AIDMA等)に対する動画の効果測定を行う
また、解析におけるメトリックとしては、以下のようなものがあります:
- 解析軸
- 時間軸
- 過去レポート、リアルタイムレポート、未来予測
- 属性
- なし、User-Agent等、クラスタ、DMP
- 時間軸
- 動画KPI
- QoE(ユーザ体験)
- ラグ(再生開始までの時間)、バッファリング回数、視聴ビットレート、エラー数、ラグ率(ラグ/総視聴時間)
- 認知貢献
- インプレッション、視聴開始率、視聴回数、ユニーク視聴者数、ピーク視聴数、総視聴時間、ユーザあたり視聴時間
- 検討貢献
- 再生時間、再生率、視聴完了率、エンゲージメント、滞在時間、直帰率
- 行動貢献(コンバージョン)
- (直接)クリックスルー数・率
- QoE(ユーザ体験)