インテリジェント・ビデオ・プレイヤー
インテリジェント・ビデオ・プレイヤーとは、Internetにおける動画視聴において、プレイヤー側に高度な機能を持たせようというパラダイムである。つまり、従来のWebサービスでは、低機能(ダム)なWebブラウザを対象にサービスが構成されてきた。一方、ビデオプレイヤーではWebブラウザに比べ高度な処理を行わせることが可能であり、パラダイムシフト的なサービス構成の変更が必要であるという提言でもある。
インテリジェント・ビデオ・プレイヤーの具体的な適用アプリケーションとしては以下のようなものがある:
- 冗長ストリーム
- アダプティブビットレート制御
- マルチCDN
- 位置情報サービス
冗長ストリーム
配信サーバがダウンした時のフェイルオーバー処理は、ストリーミングの初期(2000年ごろ)から、プレイヤー側での制御が主流であった。つまり、プレイヤーは、プライマリのサーバ(ストリーム)からコンテンツをダウンロードできなくなった時に、バックアップのサーバ(ストリーム)に切り替えるという処理を行う。
アダプティブビットレート制御
再生環境に合わせて最適なビットレートのストリームを選択するアダプティブビットレートについては、ストリーミングの初期(2000年ごろ)においては、サーバ側でクライアントの受信状況を監視しながら、送信レートを変えるという制御が主流であった。しかし、現在では、あらかじめ複数のビットレートのストリームを用意し、プレイヤー側で最適なビットレートのストリームを選択するという制御が主流となっている。
マルチCDN
現在普及しているWeb用のマルチCDNでは、サーバ側のマルチCDNナビゲーション装置が、各ブラウザに対し最適なCDN選択を行っている。これに対し、インテリジェント・ビデオ・プレイヤーでは、プレイヤー側の判断により最適なCDNを選択する。これは、以下のようなWebと動画のメディア属性の違いを利用したマルチCDNであると言える:
Web | 動画 | |
表示までの遅延(望ましい時間) | 即時(コンマ秒以下) | ある程度(数秒)は許容 |
メディア型 | 断続 | 連続 |
マルチCDNとしての構成比較は以下のようになる:
(ダム)Webブラウザ | インテリジェント・ビデオ・プレイヤー | |
最適CDNの最終判定 | サーバ側 | プレイヤー側 |
ネットワーク統計処理 | 事前集計 | リアルタイム集計 |
そして、インテリジェント・ビデオ・プレイヤーによるマルチCDNは、以下のようなメリットを持つ
- 計測のためだけのトラフィックが発生しない
- モバイル網とWifi網の比較等に必要となる、ローカルかつクイックな判断が可能
- マルチCDNの実現コスト・運用コストが小さい
- プレイヤー改修のみでマルチCDNを実現できる
- サーバおよびCDN側がダウンしても、プレイヤー側でフェイルオーバーできる
ここで、マルチCDNの実現および運用コストの小ささは、新しい形のライトなCDN運用(例えばISPの自社網専用CDNやローカルキャッシュ)を可能とし、ISPとOTT間の協力・共存についての新しいオプションとなる可能性を持っている。